2016/01/26

Yadwigha  2  その扉はどこにある?


アンリ・ルソー
彼の絵をポストカードの大きさで見る。
もっと近づいて見る。ぐっと深く見る。
一見タッチも拙くてなんとなくデッサンも狂っているように見える(もっとも人物像を描くときに実際の顔のパーツを定規で図っていたらしい)そんな絵の中から鳥の鳴き声が聞こえてくる。獣の荒々しい息遣いが耳元にやってくる。むせ返るような野生の花の匂いが漂い部屋中に満ちてくる。

ジャングルの中をかき分けかき分け、緑の奥深くに入っていった時にその先にひっそりと満月に照らされる湖が見える。白々と夜が明ける中で蛇使いの女が奏でる夜の名残の物悲しい調べが聞こえてくる。

この感覚はすべて  のように感じるだけなんですが、実際のルソーの絵を前にした時にきっとこんなことが起こると思います。
MoMaにあるルソーの’夢’はおよそ2m×3mの大作です。
若いころに2度MoMaにいきましたが残念ながら見た記憶がないんです。
もしかしたらその頃はいわゆるモダンアートの方に夢中でルソーの絵を壁紙のようにしかキャッチしていなかったのかもしれないしどこかに巡回されていたのかも知れません。

Iphoneの画面の中からでも立ち上がる風景がもし今目の前にあったら。。

ルソーは一連のジャングルの絵を描くときに自分の描いている絵の世界の濃密さにしばし息苦しくなり窓を開けた状態で製作を続けていたらしいです。

今、その絵をテーマにしながらKa wae を制作していく中で
窓も凍るこんな日に ルソーのジャングルの暑く蒸した空気や、真っ赤に燃える夕日を背中に感じているような気がしてとても嬉しくなるのです。

そしてその世界にどっぷりと入ることができたのは一冊の本がきっかけでした。
本屋に行くと平積みにされている文庫本の中にいつも気になって だけどいつかいつかと思い買いそびれていた本がありました。

原田マハの  楽園のカンバス
アンリ・ルソーの絵に纏わるミステリーだということだけは知っていたのですが
それ以外の情報も全く持たずにこのタイミングで読み進めますと。。。
ルソーの絵に魅了される登場人物たち、ルソーとルソーを認め応援していた人々(ここにとても重要な人がいるのですがそれは読んでのお楽しみです)
そしてYadwigha ヤドヴィガ ルソーの夢に出てくるいわばミューズと言われる女性達がまるで当時の姿を見てきたかのようにいきいきと動きまわる世界が広がっていました。


史実に基づいたフィクション小説ですがどこのエピソードが本当でどこのエピソードがフィクションなのかわからなくなるくらいリアルで あー、本当にこんな事が起こっていたんだな、とか もしや本当にそんな事が起きていたのかも。とか思いながら
最後には芸術というものに魅了され、限りなく情熱とそして愛を注ぐ主人公達の姿に胸がいっぱいになりながら本を閉じる。

原田マハさんの美術、芸術に対する限りない愛情が全編にあふれる素晴らしい本でした。

そして今は余韻にひたりその世界を脇に感じるべくアンリ・ルソーの絵を壁に貼って。。絶賛製作中なのです。

ああ、またいつか実物の「夢」の絵を見に行けますように。。。


春の展示会は
yadwigha
  いつもの場所Madrigal kita店にて
今回は変則的で土、日、月曜日です。
詳細は追ってお知らせいたしますね。

instagramでは日々の制作もお知らせしています。
そちらもよろしければどうぞ覗いてくださいね.

kawaeleatherです。